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「ここか、ついに...!」
見上げる空には雲ひとつ無く、「お前には輝く未来が待っている」と言わんばかりだ。
私立神威学園。

政府が行っている制度───”ギフテッド制度”に選ばれた”超高校級”を冠する高校生でないと入学さえできない、あの学園だ。

校門に書かれた文字を繰り返し読む。ついでに指でなぞってみる。
ああ、そうだ。俺は神沢伊織。少し前まではミステリが好きなただの高校生だった。
本当に、ただの興味だったんだ。
友人に勧められて、推理小説を書いて公開した。改めて読めば本当に拙いただの文章。

伏線が上手く張れていなかったり、トリックが現実的にありえなかったり。
でも、そんなのが有名な新人賞を受賞したんだ。

…それ以降のことはよく覚えていない。物事がとんでもないペースで進んでいって。

気付いたときには『超高校級の推理作家』と呼ばれていた。
何作か書いたところで、この神威学園にスカウトされた。
まあ、俺なんかの話は心底どうでもいいだろう?

それより神威学園だ。これはとんでもないことだ。緊張と興奮で震える足に力を入れて、敷地に1歩踏み入れた。
...ハズだった。
突然の目眩と吐き気、立っていられない!コンクリートの固い地面に倒れ込んだ。
痛い。
苦しい!呼吸が乱れる。遠くなりつつある意識を手放すとき…
「ようこそ、絶望の学園へ。...神沢伊織くん?」
俺は、確かにその声を聞いた。

ーーーーーーーーー

あー。
ああーー。

教室の机にうつ伏せになる形で俺は目を覚ました。
何が起きているのかわからず、反射的に出そうになった声を封じ込める。
そっと深呼吸をして心を落ち着けてから、辺りを見渡す。
いたって普通の教室のようだ。窓が無いことを除けば。どうして窓が無いんだろう。
疑問に思い、もう一度改めて室内を見渡す。すると、眼鏡をかけて服をインクで汚した少年が見えた。
彼は、こちらに気が付くと笑顔で近寄ってきた。
???「あ!やっといた!」
???「俺以外に誰も見ていなくてさ。俺1人だと思ってた。...君は誰?」
神沢「俺か?俺は神沢伊織。『超高校級の推理作家』って呼ばれている。」
???「まさか...あの銀田一シリーズの神沢センセイなの!?俺すっごく好きなんだ。」
???「こいつが犯人だ、って露骨に思わせておいて裏をかく感じ、作者に弄ばれているような感じがして。」
???「そして俺がそんな作品の表紙を書かせてもらえる日が来るなんて...夢にも思っていなかったよ…。」
神沢「えっ…ということはあんたは…」
???「ああ、名乗っていなかったよね。」
館岡「俺は館岡要。『超高校級の芸術家』なんて呼ばれているよ!」
神沢「館岡要!あの時は世話になった。…こんなこともあるんだな。俺たち、初めましてって感じでもないような気になってきたな。」
神沢「じゃあ 、頼りの館岡センセに助言を頂こう…俺が常に持っていた筈のノートパソコンが見当たらないんだ。」
館岡「!?俺も持っていたハズのスマホが無くなっている…」
館岡「怪しいよね、そう思わない?」
館岡「怪しい繋がりでさ、俺どうしてここに来たのか覚えてないんだよね。」
館岡「…神沢センセイは?」
どうやってここに来たのか…?
思い出せない。どうしてだ。ここは自分の学校ではない。俺は神威学園にスカウトされて、学園に来て、それで?

それで…どうしたんだ?
考えているうちに、呼吸が乱れ始めた。

館岡「神沢センセイ?」
館岡「無理に思い出さなくていいよ。落ち着いて。」
神沢「ああ…ごめん、ありがとう。」
館岡「ここにいるのは俺たちだけ、と決まったわけじゃないしね。」
神沢「もし俺たち以外にもいるとしたら…」
館岡「彼らに聞けばいい。そうでしょ?神沢センセ。」
館岡「もし手がかりがあったのなら…」
館岡「センセイの本職の推理でサクッとキメちゃってよ!」
神沢「おいおい、俺の本職は学生だぞ?」
神沢「いつか、お前みたいな探偵のいる小説を書きたいな…。きっと面白くなる。」
館岡「!?嬉しいよ…!その為にも、何としてもここから出ないとね!」

ピーンポーンパーンポーン

神沢「どこからだ?」
館岡「スピーカー。へえ、こんなところに。」
どこか癖のある、不思議な声が流れてきた。
???「これより入学式を執り行います!至急、体育館にお集まりください!」
神沢「入学式…?」
ここに来てから地図を見た思い出は無い。体育館の場所なんて知るわけがない。
館岡「体育館かぁ…うん、わからないけど俺は行くべきだと思うな!」
アハハ、と軽く笑った館岡に手を引かれ教室を飛び出した。
こういう楽天家は嫌いじゃない。

俺達が体育館に着いたときには、14人の少年少女が様々な様子で混乱していた。
ここに来るまでに迷ったことは言うまでもないかな。
???「また2人来たにゃ!」
???「神様天使様…我らに祝福を…」
???「飴、なくなったー…。」
館岡「センセイ!なかなか賑やかだねぇ。」
思い思いの行動を取っている集められた彼らを見ながら、館岡と話していた。
その時だった。
『パッパラー!』
鳴り響くファンファーレ。
???「16人!うん、お揃いのようですねぇ!」
???「いよいよ始まるでござる!」
???「とっととやるでがんす!」
???「待ちくたびれた...」
どこからともなく不気味な声が聞こえてくると、何かが降ってきた。
パンダ、犬、猿、雉…の喋って動くぬいぐるみ?
???「うわあ!なななんだこれ!オカルトは勘弁だぞっ!?」
???「オカルトなんて失礼な!オイラはパン太郎。この神威学園の理事長でーすっ!」
パン太郎「それから、オマエたちに紹介してやりましょう!オイラのエキセントリックな部下達ー!!」
???「部下?こんなにうるさいぬいぐるみが部下ってことかしら?」
???「オレっちはモノッキー!オマエラ風に言うと超高校級の猿でござる!」
???「ミーはモノワンダーでガンス。1番賢いでガンスよ!」
???「ワイはモノトリ…オマエラに言うことは、無い」
パン太郎「あれ、モノッキー?あいつらは?」
モノッキー「あ、い、つ...?あ!忘れてたでござる!取りに行ってもいいでござるか?」
パン太郎「んもぅ、仕方ないなぁ〜。特別だよ?と、く、べ、つ。かわいいオマエラだから許しちゃう〜♡」

3体(匹?)は勢いよく飛び出していった…。騒がしい。
ふと見ると、パン太郎が俺たちにタブレット端末のようなものを配っている。
パン太郎「ご説明いたしましょう!こちらはパンタブレット。オマエたちの情報やこの神威学園の地図が載っている、スペシャルなタブレットなのでーす!」
パン太郎「...同僚のモノクマから借りているから、オマエたち、大事にするんだぞ!」
???「パンダか縫いぐるみか存じ上げませんが...はて、同僚とは?仕事で私達の誘拐を?モノクマ、というのは…?」
パン太郎「んもぅ!質問攻めしないの〜!そのモノクマってのはね…」
地響き。そして機械音。広がるガソリンの匂い。
???「次は何…!?」
現れたのは、3種の巨大ロボット。それぞれ機体に、
『鬼ヶ島-γ-』『鬼ヶ島-x-』『鬼ヶ島-α-』と書かれている。
???「うひょー!男心を擽られるぜ!」
???「それどころじゃないと思うよ〜?」
そいつらは、俺たちの目の前に立ち塞がった。
パン太郎「これらのロボはオマエたちを殺すために作られたもの…そう!オマエらにはこの神威学園で、コロシアイをしてもらいまーす!」
コロ…シアイ?
こいつが何を言っているのかわからない。説明が並べられていくが全く頭に入ってこない。
コロシアイ。ころしあい。殺し合い…?
我に返るまでにどれだけの時間がかかったのだろうか。
気付いたときには、パン太郎のまとめの声。
パン太郎「それでは、素敵なコロシアイ学園生活を!」
…輝く未来?馬鹿馬鹿しい。俺たちに見えたのは、暗く深い絶望だけだった。
パン太郎と手下達はすぐさまどこかへ逃げていった。くそ。
???「みんな!…混乱してると思う。でも希望だけは捨てないで。」
凛とした少女の言葉にみんなが思い思いの反応を見せ、解散となった。
寮と思われる施設を探しておいてくれていた人がいた。
そのまま各自、自分の部屋でゆっくり休むこととなった。もちろん休めないが。
しかし疲れた。でもこれは何かしらの悪い夢だ、と自分に言い聞かせる。
ふと、パンタブレットやらを見てみる。そこには『神威学園でのルール』なる悪趣味なものがあった。絶句モノだ…。
『生徒内で殺人が起きた場合は、生徒全員参加による学級裁判が行われます。
  学級裁判で正しいクロ(犯人)を指摘できれば、殺人を犯したクロだけが処刑されます。
  学級裁判で正しいクロを指摘できなかった場合は、校則違反とみなして
  残りの生徒は全員処刑されます。
  生き残ったクロは特別措置として罪が免除され、学校からの脱出が許可されます。
  3人以上の人間が死体を最初に発見した際に、それを知らせる
  "死体発見アナウンス”が流れます。
  監視カメラやモニターをはじめ、校内に設置されたものを許可なく破壊することを禁じます。
  理事長ことパン太郎に逆らうことは言語道断です。
  この学校について調べることは自由です。特に行動に制限は課せられません。
  なお、神威学園でのルールは理事長の都合により順次増えていく場合があります。』
タダでさえ悪かった気分がもっと悪くなった。今日はもう寝よう。
明日の朝起きたら、母さん特製の目玉焼きと父さんののんびりとした話が待っている。
そう考え始めたところ、気付いた時には深い眠りについていた。
そうだ、この布団は案外悪くない。
 

次の日
自分の部屋の天井が待っていると信じて起きたのに、そんなことは全くなかった。
未だ脳の半分は寝ているであろう俺が最初に見たもの、それは─。
神沢「館岡。人の上に乗って何が楽しい。」
館岡「やだなぁ神沢センセ!君がちゃんと鍵を掛けておかないのが悪いんだよ?」
神沢「…館岡。今は何時だ?」
館岡「今?九時くらいだよ。16人の中に超高校級の栄養士さんがいてご飯を…あ!ご飯を食べ終わったらみんなに挨拶をしに行こう。…これから長くなるかもしれないから。」
神沢「縁起でもないこと言うなよ。すぐに出られるさ。」
ということで俺たちは、他の『超高校級』と交流をすることになった。
ちなみに、その栄養士の食事は超高校級に美味しかった。

✩以下、キャラ個別イベになります✩

石戸谷
『ガン!ガン!!』
神沢『誰かがドアを殴っている…』
神沢『危ない!止めさせないと!!』
神沢「おい!やめておけ!!」
???「フッ!ハァッ!」
神沢「おい!聞こえているか!?」
???「!」
???「ごめん、全く気が付かなかったよ…」
神沢「痛いだろ、大丈夫か?」
???「大丈夫だよ!もし、ここを破壊できたらみんなで外に!」
館岡「やめておいた方がいいよ。」
神沢「館岡!…やめた方が良いって、どういうことだ?」
館岡「パンタブレットの中身は読んだ?」
『神威学園の掟 破壊はダメ、絶対。』
???「こんなルールがあるの!?気をつけないと…」
???「早く出て…弟達と妹達に会いたい…。」
館岡「それにはキミの力が必要だよ!"超高校級のアルバイター"石戸谷 謙信くん?」
石戸谷「えっ、なんで僕の名前を?」
館岡「ある界隈じゃ有名なんだよ。」
神沢「弟妹って言っていたけど…兄弟がいるのか?」
石戸谷「うん、たくさん。僕がいなくてもなんとかしてくれてると思うけどやっぱり心配で。」
『家族…。今頃心配してくれているんだろうな。』
『家族のためにも早くここから出ないと!!』
神沢「力仕事になった時は頼んでもいいか?」
石戸谷「うん!僕、頭は良くないからそうやってみんなに貢献していきたいよ!」
館岡「頼りになるね、よろしく!」
見た目は少し怖いけどいい奴だ。
彼には、たくさん手伝ってもらうことになりそうだ。

朱里
神沢「よう…お前は誰だ?」
???「あたしか?あたしは『超高校級の刑事』歩多破 朱里だ!」
そうだ…入学式の後みんなを励ましていた彼女だ。
館岡「歩多破…聞いたことのある名前だね。」
朱里「そうだろうな。お前は推理作家なんだろう?」
神沢「なんで知っているんだ?」
館岡「俺が言ったんだよ。ちなみに、彼女の父親は有名な刑事。」
神沢「ああ、それで俺が知っているのか…」
朱里「多分な…。ところで残念なんだが、学園のどこを探しても出口は見当たらないんだ。」
朱里「…こんな事件初めてだし。」
神沢「えっ…」
朱里「でも約束する。あたしは刑事としてみんなを守り、ここから安全に脱出させてみせる!ついでに謎も解く!!」

朱里「コロシアイなんて、絶対に始めさせないからな!!パンダ野郎肝に銘じとけ!!」
神沢「頼もしいな…」

館岡「本当にね…」
朱里「ああ、あたしに出来ることなら遠慮なく言ってくれ。よろしく頼むぞ、神沢君!館岡君!」
『グー…』
朱里「神沢君、腹減ったのか?」
神沢「朝飯食ってすぐなのに何でだ?」
朱里「…だな」
神沢「何だ?」
朱里「カツ丼だなッッッ!!!」
神沢「!?」
館岡「カツ丼…!?」
朱里「過去の人は言った…腹が減っては戦はできぬ…」
朱里「カツ丼が無ければ捜査はできぬッッッ!!!」
神沢「いや言ってないぞ!?」
明るくて、みんなのことを考えていて…。悪い奴ではなさそうだ。
カツ丼を愛しているんだな。愛されているかは知らないが。

三根
部屋を歩き回りながらメモを取っている生徒がいる。
館岡「動物園の熊みたいな落ち着きのなさだね。」
神沢「でも何かに気付いているみたいだ!」
???「気付いていますよ?」
館岡「俺達の気配に?」
???「ええ、貴方がたの気配に。」
神沢「気配…!?」

館岡「わお、すごいねぇ。よくわかったねぇ!」

???「いえ、本業ですから…」
???「人と話すのは得意な方では無いので、簡潔に。」
館岡「彼は三根亘クン。"超高校級のゴシップ記者"だよ!」
三根「代わりにありがとうございます。芸術家の館岡くん。」
神沢「俺は"超高校級の推理作家"神沢伊織って言うんだ。よろしくな。」
三根「ほう…あの推理作家の神沢先生ですか。」
三根「お2人とも素晴らしい才能をお持ちで。私は恥ずかしくなってきました。」
館岡「いやいや、キミの才能も素晴らしいものだよ。」
館岡「つまらない現代日本に刺激を与える、素晴らしい記事ばかりだ!」
日本に刺激…?どんな記事なのだろう?

ここから出たら、彼の記事を読んで小説に生かそう…
三根「ですが、皆さん自分の能力を過度に良いと思わないように。」
三根「これは私からの忠告ですよ。」
神沢「あ、ああ…。」
館岡「…」
三根「誰よりも優れている私からの一言です。」
三根「では、ここで。」
あの館岡を黙らせる…。三根亘、油断できない男だ。

山戸
???「青い空、白い雲!」
???「勇気を持って発掘してやらぁな!!」
うるさくて、熱い男がいる。
館岡「賑やかなのも悪いことじゃないよ。話しかけてみようか?」
???「クーっ!いい匂いがするぜぇ!!」
神沢「おい!そこの犬みたいなお前!」
???「犬じゃねぇよ!俺は歴史に名を刻む…」
山戸「考古学者の山戸澪だ!!」
館岡「こっちは歴史に名を刻む推理作家の神沢伊織センセイ。」
神沢「こいつは歴史に名を刻む芸術家の館岡要。」
山戸「お前らもすげぇんだな〜!」
山戸「…そうだ。考古学、分かるか?」
山戸「ひとえに考古学と言っても…」
神沢『俺は経験上わかっている…』
神沢『この手のヤツは話が長い!止めないと!!』
神沢「その話は後々聞くから!お前はここに来てから何か見つけたか?」
山戸「何も見つからねぇから発掘しようとしてるんだよ!!」
神沢「なんでその考えに至ったんだ…」
館岡「キャンキャンうるさいしテキスト数の関係でもう少し落ち着いて喋ってくれないかな?」
山戸「テキスト数だと!?メタいなオイ…」
山戸「あーでも、あの巨大ロボの格納庫は一応あったんだ。」
山戸「ドアには鍵が掛かっていたけどよ…」
神沢「それは有力な情報だな…」
館岡「本能に従ってもいいけど、出られるように手伝いもしてね?」
山戸「任せとけ!お前らもよろしくな!!」
明るくていい奴だ。頼りにさせてもらおう。

水戸
金髪で背の小さい女子が壁に背をつけて座り込んでいる…
???「…」
???「……」
神沢「寝ているのか?」
館岡「みたいだね。起こしちゃ悪いからそっとしておいてあげようか。」
???「人の安眠邪魔するとか、マジありえないんだけど。」
???「うっさいよ。あたしはここの探索に疲れてるの。」
神沢「起こしちゃって…ごめん。」
館岡「それで?その探索の中で何か見つけられた?」
???「別に何も。本当に出られないことがわかっただけ。」
???「それよりも名前の一つや二つ、名乗ったらどうなの?」
館岡「ん?ああ、そうだね。俺は館岡要。超高校級の芸術家だよ。」
神沢「超高校級の推理作家、神沢伊織だ。よろしく。」
館岡「神沢センセイは凄いんだよ!もうほんとすっご…」
水戸「水戸都。」
神沢「水戸…?」
水戸「それがあたしの名前。」
館岡「で、キミはどんな素晴らしい才能を持っているんだい?」
水戸「あんた達にはわからないだろうね…才能がわからないあたしの気持ちなんて…!」
神沢「ここに来た経緯もわからないんだし、いつか思い出すんじゃないか?」
水戸「元々無いかもしれない才能を思い出せっていうの!?…バカらし。」
そう言うと、彼女はどこかへ行ってしまった。
気難しい奴だ。彼女とやっていけるのか?
でも俺は、彼女…水戸の才能を知りたい。

折笠
???「〜♪」
歌声が聞こえる。
館岡「誰かな?綺麗な声だね…」
神沢「行ってみようか。」
???「ああ、神よ…」
館岡「どうやら聖職者みたいだね。美しい…」
???「私は何時になれば天使に出会えるのでしょう…」
???「え?信者が足りない?でしたら…」
???「私以外の15人、全員入信ですわ!」
神沢「ッ館岡!見惚れている場合じゃない…逃げるぞっ!!」
館岡「ちょ、引っ張らな…!!」
???「逃がしませんよ?」
折笠「うふふふ、私は折笠芽唯。"超高校級のシスター"と呼ばれております。」
神沢「超高校級の…シスター…!?」
館岡「どうしてそう呼ばれるようになったの?」
折笠「宗教戦争を解決させたあたりですかねぇ。」
折笠「そんなことはともかく!皆さんも、神を信じればここから出られます!さあ、」
折笠「レッツ入信!!!」
館岡「俺たちは…お断りしておくよ…ははは…」
そう言って、俺たちは全力で逃げた。
怪しい…変な奴だ。
でも、この状況下だと、逆に励まされるような気がするな。

五月女
館岡と教室に篭って話をしていたら、外から声が聞こえてきた。
???「い、いかにもオカルトとかそういう建物…」
???「これはそういうゲーム。ボクは実況をしている…ここを開ければどうせ何かがバッて…」
???「来るなら来いよ!開けるぞ!3,2…」
館岡がドアに近寄る。手には懐中電灯?
ガラッ!
館岡「バッ!!!」
???「ぎゃああああああああ出たああああああッッッ!!!!!」
バタッ!
神沢「おい館岡、度が過ぎるぞ?気絶してるじゃないか…。」
館岡「ごめんごめん、看病しなきゃだよね。看病と言えば膝枕!」
神沢「は!?ってオイお前何で俺の膝の上に乗せてるんだよ!?


館岡「神沢センセイの初めての膝枕、俺に欲しかったな〜…」
神沢「って、お前が乗せて来たんだろ…」
館岡「まぁね」
???「うっ…くっ…」
神沢「大丈夫か!」
???「はぁ…美女に…膝枕されて…い…」
バタッ
神沢「館岡」
館岡「なぁに?神沢センセイ。センセイのお願いなら何でも聞くよ。」
神沢「今すぐここに美女を連れてこい…」
館岡「そうだよねぇ。神沢センセイは女のコみたいに綺麗だもんねぇ。」
神沢「だあああ!!起きろ!お前の名前は何だ!!!」
五月女「五月女…琥珀…"超高校級のDJ"…ってカンジ…?」
神沢「よしわかった五月女。床を枕にするのは健康にいいんだぞ。」
館岡『やばい…神沢センセイめっちゃ怒ってる…!』
館岡『そんなセンセイもステキ宥めないと!!』
館岡「センセイ、落ち着いて?」
館岡の意見などどうでもいい。
起きたら1発お見舞いしてやる。

樋上
???「ほう…良い建物じゃないか…」
館岡「ああ!あれはっ!!」
神沢「知り合いか?」
館岡「今をときめく天才建築家…樋上クンじゃないか!?」
???「兄ちゃん、よく知っているな。いかにも。」
樋上「オレが"超高校級の建築家"樋上康太郎だ。」
神沢「丁寧にありがとな。俺は…」
樋上「"超高校級の推理作家"神沢伊織だろう?」
館岡「キミも神沢センセイの魅力で気がついちゃったか!さすがセンセイだよね!んで、俺はわかる?」
樋上「このへんまでは出てきてるがな…。」
樋上は自分の足首を指さした。
神沢「…館岡要。芸術家をやってる奴だ。」
館岡「神沢センセイ…!今俺のこと紹介してくれた!下の名前言ってくれた!センセイ、アンコール!!」

樋上「神沢、お前さんも大変だな。1度休め。」
神沢「本当に大変だよ…。お言葉に甘えて休まさせてもらうな。」
樋上「お構いなく。お前は、ここで何か見つけたか?」
神沢「大事そうなものは特に…。樋上は何か見つけたか?」
樋上「とりあえず全ての建物を見たんだが、全く欠損していなかったくらいだな。」
館岡「こんなに埃っぽいのに?」
樋上「ああ。どこをどう見ても何もなかった。」
樋上「まるでオレ達を…閉じ込めているみたいにな。」
閉じ込めている…
樋上のひとことが、とても引っかかった。

浦崎
さっき飯をくれた栄養士だ…。
館岡「さっきはありがとね!」
???「別に特別なことじゃないよ。感謝されるほど。」
神沢「俺からも。おいしかったよ、ありがとう。」
???「うん。お粗末様。」
神沢「名前…聞いてもいいか?」
浦崎「浦崎つぐみ。"超高校級の栄養士"とか呼ばれてる。」
館岡「浦崎さん、そのレシピは何だい?」
浦崎「歩多破さんに頼まれた。…健康的でおいしいカツ丼を、って。」
神沢「そんなカツ丼あるのか?」
浦崎「言われたからには作らなきゃいけないよ。ていうか、」
浦崎「両サイドから質問攻めにしないでよ。迷惑。」
館岡「え、あ…ごめん!」
神沢「すまない!すぐ捌けるから!」
浦崎「女子に弱い側の人間なんだね。」
浦崎「ま、食べたいものがあるなら言ってよ。できる限り作ってあげるから。」
館岡「檸檬を使った美味しいのを頂戴よ!」
浦崎「わかった。じゃあ、さっさと脱出方法を探してきて。」
俺と館岡は、素早く食堂から出た。
飯のことは心配無さそうだな。
しかし館岡、こいつも女に弱いタイプの人間かよ…

芹田
校庭をふらふらしている少女がいる…。
???「ねえ、あなたもしかして…館岡要?」
館岡「俺のファンかな?でも俺の心は神沢センセイ一筋だか」
神沢「やめろ黙れ」
???「ファンなんかじゃないわ。私は"超高校級のデザイナー"芹田琴子よ。」
館岡「ああ!名前は聞いたことあるよ!」
神沢「その言い方は失礼だろ…」
芹田「館岡要!私はあなたに言いたいことがいくつもあるの!!」
館岡「愛の告白?神沢センセイ以外受け付けないよ?」
神沢「気持ち悪いぞ。芹田の顔見ろよ…。」
館岡「わあ、怖い怖い。んで、本題は?」
芹田「その芸術!果たして芸術として良いのかしら!」
館岡「どういうことだい?」
芹田「あなたの芸術が理解できないのよ!」
館岡「芸術を理解しようなんてナンセンスだね。君ならわかってくれると思ってたのに…」
芹田「あと、せめて…」
芹田「締め切りは守りなさいッッ!!!」
神沢「そうだ館岡…表紙の時の2週間遅れ…覚えているからな!!」
館岡「芸術っていうのはね…もっと軽いんだよ!」
芹田「それは違うわよ!歴史を作りゆくものなのよ!?」
神沢「うるさい!!」
神沢「ああもう、喧嘩してても何も始まらないだろ!!」
俺は2人を強引に引き離した。
もう二度と目を合わせるなよ、お前ら…。

清瀬
???「うわあああああああああん!!!!!!」
???「うわわわわああああああああああんんんん!!!!!!!!」
館岡「誰かが泣いているね…」
神沢「行ってやらなきゃだな!」
館岡「神沢センセイ、ティッシュを渡してお…」
館岡「無い」
神沢「へ?」
???「うう、うう…」
神沢「後回しだ!とりあえず行くぞ!」
???「誰…?さ、さてはあちしを閉じ込めた人かにゃ!?」
???「超高校級にムカつく!なんでこんなことしたにゃ!」
神沢「俺らじゃねぇぞ!?」
館岡「How rude…いや、何でも。」
???「頭良さそうなこと言って…超高校級にムカつくにゃ…」
神沢「俺らも一緒に閉じ込められてるんだよ!!お前は何だ!」
???「あちしは清瀬フェーヤ!"超高校級の天使"にゃ!」
館岡「嘘は吐かない方がいいよ。"超高校級のスケーター"さん。」
神沢「お前、知っているのか?」
館岡「え?神沢センセイ知らないの?」
清瀬「イヤな予感がするにゃ!」
神沢「清瀬、耳を塞いでおけ。」
館岡「あんなことやこんなこと…全部教えてあげるよ?」
神沢「…」
清瀬「カップルかにゃ。まぁ、あちしは全世界が恋人だから〜って」
清瀬「イオリ!何で耳を塞ぐにゃ!」
館岡「俺の恋人は神沢センセイだけだよ。」
神沢「なった覚えもなる気もねえよ…」
清瀬は、ワチャワチャしてて仲良くなれそうな気がするな。
さて、館岡をどうするか…

鶴丸
かなり図体の大きいヤツがうろちょろしている…
神沢「なあ、お前…」
???「あめ!持ってる?」
館岡「飴?持っていないけど…」
神沢「どうして飴なんか?」
???「あめがなかったら、死んじゃう」
神沢「んな大袈裟な。んで、お前は?」
???「名前は、鶴丸、響。"超高校級の…指揮、者"」
神沢「指揮者か…」
館岡「気持ちはわかるよ鶴丸クン。俺も神沢センセイがいなかったら死んじゃうからね。」
神沢「勝手に言ってろ…」
館岡「あ、この方は"超高校級の推理作家"神沢伊織センセイだよ。」
館岡「んで、俺は館岡要。"超高校級の芸術家"って呼ばれているんだ。」
鶴丸「いおり、いい人。かなめ、気持ち悪い。」
神沢「いいぞ鶴丸その調子だ。そのペースで頼む。」
鶴丸「同情、するなら」
鶴丸「あめをくれ。」
館岡「神沢センセイ、俺この子嫌いじゃいよ!」
神沢「浮気か。」
館岡「そうじゃないよセンセイ〜!!」
鶴丸「あめ、くれないなら、帰って…うるさいの、得意じゃ、ない」
館岡「"超高校級の指揮者"なのに?」
神沢「誰にだって得意不得意はあるだろうよ…」
鶴丸「響は、音に合わせて、ゆらゆらしてるだけ、なんだよー。」
神沢「本当に才能、って感じだな。」
マイペースだけど話しやすい奴だ。
今度から飴を常備しておこう。

蘭州
???「あ、そこのお二人さん〜。」
???「まだ、挨拶していなかったよね~。」
館岡「俺達のこと?」
???「うん、そうだよ〜。」
???「私は蘭州結凛っていうんだ。"超高校級の手芸部"だよ~。」
神沢「なぁ館岡。」
館岡「どうしたのセンセイ!センセイから話しかけてくれるなんて…」
神沢「この子…いい子だな…?」
蘭州「2人は仲良しなんだね〜」
蘭州「仲が良ければ変なことも無いと思うし、みんなで仲良くしようね〜?」
神沢「うっ…お前…いい奴だな…」
館岡「絵に描きたいくらいには素晴らしいよ君…!!」
蘭州「んんん?どうしたのかなぁ〜?大丈夫〜?」
蘭州「あ、そうだ!細かいもので必要なものがあったら、作るから言ってね〜」
館岡「なんでも作れるの?」
蘭州「うん、手芸に関係するものだったらできるよ〜」
神沢「さすがは"超高校級の手芸部"だな。」
蘭州「でも、私ドジだから、みんなに迷惑かけちゃうかもしれないの〜。」
蘭州「だけど、出られるように頑張るね〜!」
蘭州「みんなで出て、お友達になろう~!」
いい子だ…。すごくいい子だ……。


東矢
凛々しい横顔の少女がいる…背中には…
神沢「銃!?」
???「ごめんなさい、驚かさせてしまったかしら。」
館岡「よくできたモデルだね…"超高校級のコレクター"とか?」
???「いいえ、これは本物よ。」
???「私は東矢麗沙。"超高校級のスナイパー"と呼ばれているわ。」
神沢「スナイパー…!?」
東矢「ええそうよ。あまり大きな声では言えないのだけれど…」
東矢「政府直属の、スナイパーなの。」
館岡「…もしかして、首脳会談のときに暗殺されたあの大統領って?」
東矢「私が彼を撃ち抜いたわ。」
神沢「犯人犯人、って言われなかったのは…政府が抹消したってことか!」
東矢「その通りよ。けれど、私自身怖い人ではないから安心して頂戴。」
館岡「自分で言うの?」
神沢「趣味は?」
東矢「アフタヌーンティーとアンティーク収集。」
館岡「何も怖くなかった…」
神沢「むしろまともだ…」
東矢「わかって頂けたのなら嬉しいわ。」
東矢「依頼さえあれば、私は全てを撃ち抜くわ。遠慮なく頼って頂戴。」
冷静で、この状況にも対応できている…。
さすが政府のスナイパー、といったところか。



みんなと挨拶をした後、俺達は別れて各自の部屋で休むことになった。
神沢「ふう、疲れ…ってパン太郎!!!不法侵入だぞ!」
俺の部屋にはパン太郎がいた。
しかし返事も何もしない。よくよく見るとパネルだった。が、
神沢「気持ち悪いなこれ…」
パン太郎「気持ち悪いとは失礼な!!」
神沢「うわぁ不法侵入!!」
パン太郎「そんなに驚かなくてもいいじゃない…。第一不法侵入じゃないもん…」
神沢「不法侵入だろ…。とりあえず聞いておくが、これは一体何なんだ?」
パン太郎「説明しましょう!これは"パンパネル"。」
パン太郎「オマエらのつまらない学園生活にパンチを与える、コレクションアイテムなのです!」
パン太郎「いいよね?面白いよね?恐怖的な収集癖を持つ東矢さんホイホイだよね?」
神沢「いやなんで東矢が出てくるんだよ…捨てるぞ。」
パン太郎「あっこら!ポイ捨ては校則違反です!!」
パン太郎「鬼ヶ島に殺されちゃいますよ!」
神沢「あっても邪魔だ…っていないし…」
結局アイツは何をしたいんだ…。
イマイチこの状況を飲み込みきれないまま、疲れた俺は深く眠ってしまった。

このあと悲劇が起こるとはいざ知らず。

俺は、深く、深く………


 

序章『現実と非現実の境界』 to be continued...

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